WEB広告担当者が知っておくべき「価値に基づく入札戦略」とは

デジタルマーケティング

2023.09.25

WEB広告担当者が知っておくべき「価値に基づく入札戦略」とは

WEB広告を運用していると、どのように入札戦略を選ぶべきか悩むことが多いかと思います。コンバージョン数の最大化を目指すべきか、それともコンバージョン単価を優先すべきか……。

今回はそういった悩みを抱える方に向けて、自動入札戦略の一種であるVBB(Value Based Bidding、価値に基づく入札戦略)を紹介します。

VBB(価値に基づく入札戦略)

まず最初に、VBB(Value Based Bidding、価値に基づく入札戦略)とは何かについて、簡単にご紹介します。

基本的な考え方

VBBは「価値に基づく入札戦略」と訳されます。それでは、VBBにおける「価値」とは何を示すのでしょう。WEB広告の最終的な目的とは売上の向上ですから、VBBが示す「価値」とは「売上」に他なりません。クリック数やコンバージョン数を見るのではなく、「売上」にフォーカスした自動入札戦略ということになります。

2つの入札戦略(tROAS、CV値最大化)

VBBには2つの入札戦略があります。「目標広告費用対効果(tROAS)」と「コンバージョン値の最大化(CV値最大化)」です。この2つを紹介する前に、前提知識として必要な「ROAS」と「コンバージョン値」の考え方についてご紹介します。

ROASとコンバージョン値

ここでは、VBBを理解する上で重要な「ROAS」と「コンバージョン値」についてご紹介します。

2.1. ROASとは

ROASとは「Return On Advertising Spend」の略です。「広告費」と「広告経由での売上」をもとに算出します。広告の費用対効果を測るための指標で、下記の計算式で算出できます。

ROAS=広告経由の売上÷広告費×100(%)

ROASの値が高いと、かけた広告費に対して大きな売上が得られていることがわかり、費用対効果の高い広告運用ができていることを意味します。

例えば次のような広告Aと広告Bがあった場合、ROASはこのように計算します。

  • 広告A:広告経由の売上が15,000円、広告費が10,000円だった場合
  • ROAS 150%(15,000÷10,000×100%)
  • 広告B:広告経由の売上が10,000円、広告費5,000円だった場合
  • ROAS 200%(10,000÷5,000×100%)

売上だけに注目すると、広告Aが15,000円、広告Bが10,000円で広告Aの方が高い。しかし広告Bの方がROASの値が高いので、費用対効果が高いとわかります。このようにROASを活用することで、よりビジネスの価値に基づいた広告効果の検証がしやすくなるのです。

もちろん、ROASを高めることだけに注力すればいいわけではありません。なぜならROASはあくまで広告の「費用対効果」を表す指標だからです。

別の観点から、先ほどの2つの広告事例について考えてみましょう。

  • 広告A…広告経由の売上が15,000円、広告費が10,000円→ROAS 150%
  • 広告B…広告経由の売上が10,000円、広告費が5,000円→ROAS 200%
  • ただし、広告Aの商材は原価が4,000円、広告Bの商材は原価が5,500円

先ほどと同じ広告事例に対して、原価の情報が加わりました。

広告Aの商材の粗利は15,000円-4,000円=11,000円、広告Bの商材の粗利は10,000円-5,500円=4,500円です。確かにROASは広告Bの方が高いですが、広告Aの商材を積極的に販売した方がビジネスへの貢献度は大きいでしょう。

それどころか広告Bの商材は広告費が5,000円なので、広告費用も含めると赤字です。商材の原価を考えたうえで、いくらまで広告費用がかけられるのかを先に決めておかないと、せっかくROASを活用していても台無しになってしまいます。

つまり「ROASを高めることだけに注力しすぎたあまり、利益が伸びていない」という状況に陥ることもあるため注意が必要なのです。ROASはあくまでも売上ベースの指標です。広告運用の目的を見失わずに、ROASだけではなく売上や利益も同時に確認しながら、広告運用の効果改善を繰り返すことが重要です。

最後に、ROASの改善方法について紹介します。

ROASは「広告経由の売上÷広告費×100(%)」で算出されます。この計算式からわかる通り、ROASを上げるには以下の2つの方法が考えられます。

  1. 売上を維持しながら広告費を抑える
  2. 広告費を維持しながら売上を伸ばす

まず最初に「売上を維持しながら広告費を抑える」について考えてみます。各広告のROASを確認することで、費用対効果の低い広告が確認できます。そうした費用対効果の低い広告については広告費を抑えることで、全体のROAS向上に繋げられます。

次に「広告費を維持しながら売上を伸ばす」について考えてみます。「広告経由の売上」を分解すると「広告流入数 × CVR × 顧客単価」という構成要素になります。つまり、WEB広告から流入してきたユーザーのデータを確認し、CVRや顧客単価を改善することでも、ROASの向上に繋がります。

コンバージョン値とは

みなさんのビジネスでは、どのようにコンバージョンを設定していますか。複数のコンバージョンを設定している場合、1コンバージョンあたりの価値はどれも同じでしょうか。

例えばECサイトのように商品ごとに価格が異なる場合、商品それぞれが別のコンバージョン価値を持ちます。5,000円の服が購入された場合と、20,000円の鞄が購入された場合では、同じ1コンバージョンでも価値が異なると理解しやすいですね。

それでは、直接売上が発生しない「資料請求」、「来店予約」などのコンバージョンに対しては、すべて同じコンバージョン価値でも問題ないのでしょうか。

仮に「東京在住のユーザーの来店予約は、他地域在住のユーザーよりも1.2倍ほどサービスの契約に繋がりやすい」というデータがあるとしましょう。この場合、東京在住ユーザーのコンバージョン値を1.2倍に設定することで、より正確な広告価値を計測することができます。

もちろん、直接売上が発生しないコンバージョンにおいても、売上発生までの各ステップに到達する比率から、仮想的なコンバージョン値を計算することができます。

例えば「成約することで100,000円の価値を持つ商材」があり、この商材の成約フローが「資料請求 → 来店予約 → 成約」になっているとします。各ステップにおいて、次のステップに進む割合が以下の通りと判明しています。

  • 資料請求したユーザーが来店予約する予約率:30%
  • 来店予約したユーザーが成約に至る成約率:50%

最終的な成約フローまで到達した場合は売上が発生するので、100,000円の価値が発生します。

その手前の来店予約のコンバージョンは、100,000円×50%で50,000円の価値が発生したと考えられます。同様に資料請求のコンバージョンは、50,000円×30%で15,000円の価値が発生したと考えられます。

このように、最終的に価値が発生するコンバージョンまでのステップを整理し、各ステップへの到達状況をデータ分析できるよう基盤を整えるのが重要です。これらの分析ができていれば、直接売上が発生しないコンバージョンにおいても、適切なコンバージョン値を割り当てることが可能となります。

また、コンバージョンが複数設定されている場合も、それぞれのコンバージョンが「最終的に価値が発生するコンバージョンに至るまでの割合」を算出しておけば、適正なコンバージョン値を割り当てられます。各コンバージョン値をもとに、売上につながる可能性の高いフローと低いフローを分析し、最適化していくことができます。

目標広告費用対効果(tROAS)

ここでは、VBBの1つであるtROAS(Target Return On Advertising Spend)についてご紹介します。

目標広告費用対効果(tROAS)とは

tROASは、ROASの数値目標に最適化していく入札戦略です。例えば、tROASを200%に設定している場合、ROAS 200%(広告経由の売上が広告費の2倍)を達成できるよう入札単価が自動調整されていきます。

この入札戦略を利用すると、ROASが最大化するように入札価格を自動で調整し、最適化させていくことができます。具体的には以下のような戦略で、入札価格が自動調整されていきます。

  • 売上貢献度が高いキーワードは入札価格を引き上げる
  • そうでないキーワードは入札価格を抑える

tROASの設定方法

主要なWEB広告プラットフォームでのtROASの設定方法は、下記リンク先をご確認ください。

コンバージョン値の最大化(CV値最大化)

ここでは、もう1つのVBBである「コンバージョン値の最大化」についてご紹介します。

コンバージョン値の最大化(CV値最大化)とは

コンバージョン値の最大化(CV値最大化)とは、指定している予算の範囲内で、売上(コンバージョン値)を最大化できるように入札単価を調整する戦略です。

コンバージョン値の最大化では、価値の高いコンバージョンと低いコンバージョンを区別できるようになります。これにより価値の高いコンバージョンを優先して入札できるようになり、結果的にROASの向上につながります。

例えば、先ほどの「2.2 コンバージョン値とは」を振り返ってみましょう。1件の資料請求と1件の来店予約はどちらも1コンバージョンとして計測されますが、来店予約の方がより売上に繋がりやすいことがわかっています。

CV値最大化の戦略では、来店予約のコンバージョン値を資料請求のコンバージョン値よりも高く設定しておくことで、来店予約のコンバージョンをより多く獲得できるように入札単価が自動調整されます。

つまり、100円で200円の価値が得られるコンバージョンと、200円で1,000円の価値が得られるコンバージョンがある場合は、後者が優先されます。入札価格の平均単価は高くなりますが、ROASも高くなるため、戦略的判断に基づいて入札単価が調整されるのです。

なお、コンバージョン値の最大化を実行することで、広告費用が上がる可能性があることにも注意が必要です。

CV値最大化の設定方法

主要なWEB広告プラットフォームでのCV値最大化の設定方法は、下記リンク先をご確認ください。

まとめ

ここまで、WEB広告担当者が知っておくべき「価値に基づく入札戦略」を紹介してきました。WEB広告における価値とは売上の向上であり、価値に基づいた自動入札戦略には「目標広告費用対効果(tROAS)」と「コンバージョン値の最大化(CV値最大化)」の2つがあります。

VBBを導入することで、WEB広告アカウント上で見えるデータと、実際の売上データとの間のズレを減らすことができ、価値に基づいた自動入札が可能になります。ぜひ導入して、両者のデータを見比べながら、日々改善していきましょう。

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